お母さんが、お子さんの歯並びですぐに気付くのが、前歯のデコボコ(八重歯、乱杭歯(らんぐいば)、専門用語は叢生(そうせい))です。逆に気付きにくいのが、上下の歯を咬(か)み合わせた時に歯の間にできる隙間(開咬(かいこう))です。
この隙間とは、隣接する歯の間の隙間、いわゆる“すきっ歯”のことではなく、奥歯を咬んだ時に上下の前歯の間に生じる隙間のことです。
今回はこの二つの早期治療についてお話します。
まず、一般的なデコボコの治療についてですが、大きく分けると2通りの方法が考えられます。歯を抜く方法と抜かない方法です。歯を抜く方法は、一般的には上下左右の第1小臼歯4本を抜くことによってスペースを作ります。
それに対して抜かない方法は、歯列を広げる、奥歯を後方に動かす、歯を削るなどによってスペースを作ります。
どちらもスペースを作るという目的は一緒ですが、負担が大きく違います。
早期治療では、これにさらにもう一つ加わります。それは乳歯と永久歯のサイズの差を利用する方法です。つまり乳犬歯、第1乳臼歯、第2乳臼歯の幅の合計は、後から生えてくる永久犬歯、第1小臼歯、第2小臼歯の幅の合計より大きいため、このスペースを保ち、歯を並べるのに利用します。そのためには第1大臼歯が、前にずれ込んでこないようにしておく必要があります。
この処置はすべての患者さんに必要なわけではありませんが、スペースがギリギリの場合は、かなり重要な役割を果たします。
上記の方法でも並びきらない、あるいは口元が飛び出ているような場合は、歯を抜いたスペースを利用して歯を並べる治療法を選択した方がよいでしょう。
またスペースが十分にあり、歯の軽いねじれがある程度なら永久歯が生え揃(そろ)ってからの治療開始でよい場合が多いと思います。
次に、上下の歯の間の隙間についてですが、重傷では、奥の第2大臼歯しか咬み合わないことがあります。
隙間があると物が噛(か)み切れないだけではなく、しゃべる時に隙間から空気が漏れるため、発音も不明瞭になります。
原因の一つとして、舌や口の周りの筋肉のアンバランスが挙げられます。物を飲み込む時の舌の動きや安静時の舌の位置が悪いために、歯列が狭くなるとともに隙間が生じます。
治療法としては、歯列の横への拡大と、舌や口の周りの筋肉のトレーニングが挙げられます。
このようなトレーニングは、内容がある程度理解できるのであれば、早く始めた方が効果的です。
また、開咬の患者さんは、アレルギー性鼻炎や扁桃腺(へんとうせん)の肥大に起因した口呼吸をしていることが多いのも特徴で、このような場合は、耳鼻咽喉科への通院も必要になります。
前回、今回と2回にわたり、4種類の不正咬合(受け口、出っ歯、デコボコ、隙間)の早期治療についてお話ししましたが、治療開始はただ早ければよいというわけではありません。しかしタイミングを逃さないことは大切です。
第4回 外科矯正−受け口と出っ歯− |